????????????????????? ????????????????????????????????2006?9?19? ?? -??1? -??2?–??–???? 序論 フランス史において,大量の文書が出版された時期が3回ある. 16世紀後半の〈宗教戦争〉,17世紀半ばの〈フロンドの乱〉,そして18世紀末の〈大革命〉である.この小論が取りあげるのは,〈フロンドの乱〉の時期の文書である.それらは《 mazarinade 》――マザリナード文書――という名で呼ばれる . とはいえ,「マザリナード文書」は,あまり注目をあびることがない.それにはいくつかの理由が考えられる.ひとつには「洪水déluge」といわれるほどのその量が,歴史研究者の意欲を失わせるからであろう.その種類は4,000とも,あるいは5,000,いや 6,000だともいわれ,永らく正確な数もよくわからなかった.もうひとつの理由はその内容である.高等法院裁決,国王宣言,歌,手紙,通信,戦況報告,誹謗文書,檄文,貼り紙,詩,建白書.言語もフランスの方言,俚言,俗語,隠語,ラテン語,ギリシャ語も混じり,じつにさまざまな文書が集まっている.事実を伝えるものもあれば,捏造するものもある.歴史証言として内容をそのまま信じるわけにはいかない.その点も,歴史家の足を遠ざけてきたものだろう. そして,むしろ雑多ともいわれかねないこれらの文書に関心を寄せてきたのは,古書市場なのであった.〈フロンドの乱〉の時期からすでにコレクターが存在した.文書が今日まで保存されてきたのはこうした人々の熱心な蒐集活動のおかげなのである.19世紀半ばに出版されたセレスタン・モローによる『マザリナード文書総目録』Bibliographie des Mazarinades(全3巻,1850-1851年) にしても,研究者よりも,コレクターの方によく利用されたのではないだろうか.全種類の文書を記録するという試みは「マザリナード文書」の研究史において初めてのものであり,記念碑的な著作である.その後何度か増補を繰り返しながら,今日に至るまで,それに変わるものは出版されていない.いいかえるなら,研究史においては,それ以後,目だった変化はなかったということである. ところが,1980年代の後半にふたつの著作によって,「マザリナード文書」をめぐる環境は大きく変化することになった.クリスチャン・ジュオーの『マザリナード:言葉によるフロンド』Mazarinades : la Fronde des mots(1985年) と,ユベール・キャリエの『〈フロンドの乱〉(1648-1653年)の出版物:マザリナード文書』La Presse de la Fronde (1648-1653) : Les Mazarinades(全2巻,1989-1991年) である. ジュオーの著作は,「マザリナード文書」をコーパスとした歴史社会学的考察である.特徴は,従来の歴史学のように,事実を裏付ける「証言」をそこに求めたのではなく,それらの文書が「何をしたか」に注目したことである.それは「言葉が行為である」という発想に基づいている.コーパスとしての「マザリナード文書」に対する,まったく斬新なアプローチであった. ジュオーは,この本の最初の一章で,「マザリナード文書」についておよその概観を述べている.そこではコーパスの性質として,これらの文書が「政治思想を語っているわけではない」し,また「世論の反映でもない」ことを明示し,だからこそ,接近の方法を変更する必要があると説明する.これらの文書が何をし,どのように働き,どういう結果をもたらしたかを見ることが重要だと説くのだ.事例を分析した結果,ジュオーは結論で繰り返す.? Les mazarinades sont action, et